• テキストサイズ

優等生さんと不良君【東リべ夢】〘場地圭介夢〙

第5章 共にいる意味を




突き放すみたいに言ったのに、声音は優しくて。

彼の本心が違うのが、すぐに分かった。

「話が……したくて……」

「今更何の話があんだよ。少なくとも、俺にはねぇ」

冷たく言い放って私の横を通り過ぎようとした、場地君の服の裾を握る。

「離せ」

「やだ……」

「っ……やだって、お前……ガキじゃねぇんだぞ……」

「私っ、場地君に怒ってるの」

「あぁ?」

怒りではなく、戸惑いの色を混じらせた声で場地君が言う。

私に背を向けたままの場地君の、背の部分の服を掴んで、体を密着させた。

「場地君は、どうしてそんなに自分ばかり犠牲にしちゃうの?」

「あ? 何の話だ? 意味分かんねぇ。離せ。さっさと帰っ……」

「そういうのいらないし、頼んでないっ!」

思っているよりも大きな声が出て、こちらを振り向いた場地君の驚いた目が見開かれる。

「場地君は私の為にしてくれたのかもしれないけどっ、そんなのっ……私は嬉しくないっ……。場地君がいなくなる事で、私が辛くなるって、考えなかった? 自分が身を引くのが格好いいと思ってるなら……場地君は本当に馬鹿だよっ……」

場地君は私の言葉を、ただ黙って聞いている。

「真面目なお前が、俺みたいな馬鹿でろくでもねぇ男といたら、危ない目にも合うし、親だって心配すんだろ……」

「不良だとか真面目だとか、誰が何を思うとか言うとか、そんなの関係ないっ……。私は場地君が好きで、場地君といたいだけなんだよっ……。それすら願っちゃ、求めちゃ駄目なの?」

涙が溢れて、次から次へと流れて落ちる。

場地君の手が私の涙を拭うように、目元に触れた。

「……ん? 圭介、何やって……っ!? け、圭介っ! テメェ、何女の子泣かせてんだっ!?」

女の人が叫んだ後、場地君めがけて足が伸びて来る。場地君がその人の足を腕で阻止する。

「ばっ……テメェ、危ねぇだろーがっ! に当たったらどうすんだよっ!」

二人が言い争う声を、守られるみたいに抱きしめられた、場地君の腕の中で聞いていた。

誤解も解けて、場地君を蹴っていたのがお母さんだと知り、緊張しながらも、促されるままに場地君の部屋にお邪魔する。

初めて入る男の子の部屋は、想像していた以上に綺麗で、何だか和んでしまう。
/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp