第4章 願いも想いも半分こ
数人に囲まれ、私は怖さで何も言えずにいると、一人が私の腕を掴む。
「そんな怖がらなくても、大丈夫だよー。変に抵抗すると、怒っちゃうかもだけど」
「あんまビビらせんなって、震えてんじゃん」
何がそんなに面白いのか、笑う男達からどう逃れようかと考えていた。
「ちーっとだけ付き合ってくんない?」
私はにこやかに言われたけど、首を横に振る。
「あ? 話聞いてなかったんかよ。それとも、痛いのが好みとか?」
「マジかよ」
下品な笑い方で笑う彼等から逃げようと、私の腕を掴んでいた人の足を、出来るだけ強く踏んだ。
痛みに声を上げた男が、私を睨みつける。
「このアマァっ……」
振り上げられた手が下ろされるのが、まるでスローモーションみたいで。
気づいたら、地面に体が着いていて、頬が熱くジンジンする。
血の味がして、殴られたのだと気づく。
震えが激しくなり、涙が滲む。
「テメェ等……何、してんだ……」
声が、耳に心地よくて、先程とは違う涙が滲む。
何故ここにとか、疑問があったけど、今はそんな事どうでもよくて、ただ来てくれた事が嬉しくて。
黒髪を靡かせて、男達をあっという間に倒してしまう、その姿に見惚れてしまう。
何でこんなに格好いいんだろう。
倒れた人達を気にする様子もなく、場地君はこちらに歩いて来る。
私に手を差し伸べて、立たせてくれた。
「あ、ありがとう……大丈夫?」
「ふっ、怪我もしてねぇ俺の心配するか? 普通」
そう言って笑い、いまだにヒリヒリする頬に触れた。
「女殴るとか、マジでクソだな」
優しく頬が撫でられ、抱きしめられる。
「ごめんな……。俺のせい、だよな……」
体はひっついたまま、額だけくっつけられる。
「……もう、危ねぇ目には、ぜってぇ合わせねぇから」
悲しそうに笑う場地君を見上げ、揺れる瞳と目が合う。
ゆっくり近づく唇が、優しく重なって、深くなる。
家が近いのに、こんな場所で場地君とキスをしている。そう考えるだけで、体の熱が上がっていく。
止められないキスに、夢中で溺れ、酔いしれる。
唇が離れ、短く息を吐いた。
「……送る」
「すぐ……そこだよ?」
手を握り、歩き出した時だった。