第4章 願いも想いも半分こ
まだ興奮冷めやらぬ瞳を揺らしたまま、私の肩に額を付けて頭を凭れ掛けた。
もうすぐ予鈴が鳴るのに、教室に帰らないとなのに、動けない。
いや、動きたくない。
場地君のサラサラで柔らかい綺麗な髪が、首筋を優しくくすぐる。
「ん、ぁっ……」
髪が首筋を撫でる感触と、抱きしめたままの腰をスルリと移動する手の感触に、体が跳ねる。
「そういう反応されると、色々困るわ……」
「くすぐった、くて……」
頬を場地君の手で包まれ、耳に口が近づいた。
「くすぐってぇって声じゃねぇけど?」
耳にキスが落ちて囁かれ、また体が跳ねた。
何が何だか分からず、パニックで固まってしまう。
キャラが、違うよ場地君。
「場地さぁーんっ! いますー?」
扉が突然開かれ、千冬君の声に体を離そうとするけど、場地君は離してはくれなくて。
「ば、場地君っ……」
「悪い事してるわけでもねぇんだから、別に離れる必要ねぇだろ」
それはそうだけど、恥ずかしい。
「おっ。あー、邪魔しちゃったみたいっスね、すんません」
頭を掻きながら、苦笑する千冬君。
とりあえず離してもらった私は、何とか本鈴までに教室に戻って来れた。
千冬君のおかげだ。
段々場地君が大胆になって行く。別に嫌だとか、悪いわけではないけど、恥ずかしい。
他の恋人達は、こういう事を毎回しているのか。
恥ずかしくなくなる時はくるのだろうか。
放課後、用事が出来た場地君と帰れなくなったので、本屋にでも寄って帰ろうかと思った私は、街へ向かう。
本屋で時間を使い、本屋から出た時には日が沈み掛けていた。
足早に家路を急ぐ。
「こんばんわー」
もう少しで家という所に、誰かに声を掛けられてそちらを見ると、数人の人が集まっているのが見えた。
同年代くらいの、お世辞にも柄がいいとは言えない人達が、道を塞いでいた。
「ねぇ、君、場地君の彼女さんで、あってる?」
何故ここで場地君の名前が出てくるのか、私には分からなかった。
何だか怖くて、カバンを胸の前で抱きしめる。
「つか、マジでこの子? 真面目ちゃん過ぎん?」
「いや、絶対その子だって。だよね?」
笑顔を向けられたけど、その笑顔すら怖くて震える。