第4章 願いも想いも半分こ
驚きに目を見開く場地君が、私を見て固まっている。
「ば、場地君?」
私は場地君の顔の前で、手をヒラヒラと振る。
「マジかよ……そんな奴、この世にいんのかよ……」
「も、もちろん、カップラーメンは食べた事くらいあるよ?」
場地君にそう言うと、場地君が私との距離を詰めて来る。
「食ってみる? マジで美味ぇから」
差し出される焼きそばに目を落とす。
「もしかして、焼きそば嫌いか?」
「う、ううんっ! 嫌いじゃないよっ!」
そう。私が気にしているのは、そういう事じゃない。
これは俗に言う“関節キス”というやつではないだろうか。
キスをしておいて何だけれど、それとこれとは話が別だ。
私は控え目に、差し出されたお箸を取った。
「どうだ?」
一口食べたところで食い気味に聞かれ、場地君がいかにこの焼きそばに魅入られているのかがよく分かって、その輝く様な目に微笑ましさを感じてしまう。
「ふふっ、うん、美味しいっ!」
私の言葉に、場地君が「そうか」と嬉しそうに犬歯を見せる。
私は場地君の、この笑顔が凄く好きだ。
こちらまで嬉しくなって、笑顔になる。
「あ、場地君、じっとして」
ポケットからポケットティッシュを出して、場地君の口の端に付いていた、ソースを拭き取る。
「はい、取れた」
ティッシュを持った手を、場地君の手が掴む。
掴まれた手が熱い。
「あ、のっ……」
「今、すっげぇ、キスしてぇんだけど……」
「っ……はぃ……」
変な声が出てしまったけど、場地君から視線を外す事はしない。
ゆっくり近づく距離に、心臓が心地いい音を奏でる。
「んっ……」
触れるだけのキスが、すぐに食べられるみたいなキスに変わり、一気に体温が上昇する。
腰と後頭部に手が回されて抱き寄せられ、場地君の肩口を握りしめる。
「ふっ、ぅ、んンっ、ふぁ……」
「はぁ……もっと、舌出せ……」
言われるがまま舌を出すと、そのまま絡め取られる。
唇が熱くて、頭が痺れる。
激しいけれど、溶けるような甘いキスに酔いながら、名残惜しくも唇がゆっくり離れる。
学校で、しかも誰が来るかも分からないような場所で、まるでいけない事でもしているみたいな気分になる。