第3章 全部貴方だけに
お昼を食べる事になり、女子はみんな各々手作りの物を持ち寄る。
考える事はみんな同じだったようで、買う必要がないくらいには、色んな食べ物が揃っていた。
ちょっとしたピクニック気分まで味わえて、私は今日だけで色んな体験をした。
食事を終えてトイレ休憩から帰ると、ベンチに場地君の姿があって、向こうも私に気づいたようでこちらを向く。
「楽しんでっか?」
「うん、遊園地って久しぶりだし、大勢で出掛けるなんてないから、凄く楽しい」
場地君は、ニカっと犬歯を見せて「そうか」と笑った。
この飾らない笑顔も好きだなぁと考えていると、場地君が立ち上がる。
「しかし、女って髪や服変えるだけで、ガラッと変わるもんだな」
嫌味とかではなく、場地君は純粋な興味で言っているんだろう。
私の下ろされた髪を少し掬って、不思議そうに言った。
「……あー……悪くないんじゃねぇか?」
「え?」
「かわ……っ、似合ってんじゃ、ねぇの?」
慣れないながらも、必死に褒めようとしてくれるのが素直に嬉しい。
「場地君も……私服、格好いいね」
「そうか? いつもと変わんねぇけど」
「じゃぁ、場地君はいつも格好いいんだね」
「ばっ……お前、たまにすげぇ事言うよな……」
普通に思った事を言っているだけなんだけど。
少しでも場地君に可愛いと思ってもらえたなら、頑張ってよかったなと思える。
場地君と二人でいる私の背後に、覆い被さって来る人がいる。
「お……重っ、い……」
「ーっ! あれ乗ろーぜっ!」
はしゃぐ万次郎に、後ろから抱きつかれてというよりは、のしかかられていて、ぷるぷるしている私から場地君は万次郎を剥がす。
「何だよ場地ー」
「お前なぁ、普通に来れねぇのかよ……。が潰れんだろーが」
後から来た龍宮寺君にも注意されている万次郎を見て、合流したみんなが笑う。
楽しい時間はあっという間で、夕陽が街を包み込む。
「遊園地で男と女がいるとなると、一つだよね?」
エマちゃんが、囁くみたいに私に耳打ちをする。
「そして目の前には、ナイスタイミングの観覧車」
「エマ、ちゃん?」
首を傾げると、エマちゃんは満面の笑みをこちらに向けている。
「エマに任せて」