第3章 全部貴方だけに
後頭部をガシガシと掻きながら、そっぽを向く場地君の顔が赤いのは、私の見間違いではないだろう。
それは一体どういう事なんだろうか。
「こんなん思ったのも初めてだし、俺バカだから……その、あんまこういう感覚が、よく分かんねぇんだよ……」
場地君の言おうとしている事も、戸惑う気持ちも分かる。私も場地君へ感じる気持ちは、場地君が初めてだから。
場地君と繋いでいる手に、少し力を入れた。
「私も、場地君が女の子に触ったり、触られたりするの、見るのヤダなぁ……って、ヤキモチ焼くと、思います……」
恥ずかしくて顔から火が出そうだし、心臓も尋常じゃないくらい早く動いている。
場地君が小さく「ヤキモチ……」と、初めて聞く言葉みたいに、呟いた。
そして、その後すぐにありえない程、真っ赤になって口元を押さえて、目を逸らした。
それが可愛くて、私は笑ってしまう。
「わ、笑ってんじゃねぇよっ……」
「ふふっ、ごめんね」
今はハッキリしなくてもいい。
私はきっと、それでも場地君を好きでいるから。
翌日、図書室で場地君と並んで座って、勉強をしている。
テストも目前だし、場地君も頑張ってるから、少しでも場地君の力になりたい。
「悪ぃな、時間使っちまって 」
「ううん、大丈夫。教えてると復習にも勉強にもなるから」
今はガリ勉スタイルじゃなく、普通の場地君だ。
好きだと自覚してから、場地君の目が見れず、ぎこちないけど、こうして隣にいられるだけで十分幸せで。
ニヤけてしまう顔を引き締めるみたいに、顔に力を込めた。
「なぁ、全然関係ねぇんだけどよ。前から気になってた事聞いていいか?」
「ん? 何?」
「香水か何か付けてる?」
「え、ううん、付けてないよ。匂い強いの苦手だし……。それに、私には似合わないし」
苦笑する私に、場地君は少し眉を顰める。
「あ? 何で似合わねぇの?」
場地君が何で不機嫌になるんだろう。
「えっと……ほら、そういうのって、可愛い子が付けるからいいんじゃないかなぁって」
「お前だってっ……その……か、かわ……可愛いだろっ……」
「ふぇっ!?」
顔ごと逸らしてしまった場地君の表情は見えないけど、多分言い慣れないから、照れているんだろう。