第2章 近づく気持ち、離れる距離
綺麗だった机の面影が全くなくなった、散らかり放題の机を見て苦笑する。
カーテンを開けて、窓も開けて換気をしていると、窓から遠くに場地君を見つけて、何故か咄嗟にしゃがんで隠れてしまう。
別に見つかったからと言って、彼が私を気に掛ける事なんて、もうないのに。
「ほんと……どうしようもないなぁ……」
まだ何処かで期待している自分が、馬鹿で情けなくてまた涙が滲む。
時計の音だけが響く部屋の前に、私の鼻を啜る音を消すように、複数の男子生徒の声がして扉が開かれた。
「ちーっす、せんせー、ノート持って来たー……って、あれ?」
「ん? 女の子じゃんっ! つか、泣いてるの?」
数人が扉から顔を出して、私に視線が集まり、ビクッとしてしまう。
背を向けて涙を拭い、振り向いた私は背が冷えた。
「俺等が慰めてあげよっか?」
いつの間にか目の前に男子達が迫っていて、窓と彼等に挟まれて身動きが取れない。
しかも、器用に私の背後の窓とカーテンを閉めた。
逃げ場を失った私は、震える唇を必死に開いて言葉を紡ぐ。
「あ、あのっ……先生、は……ここにはもう、来ないと……」
「へぇー、わざわざ人が来ないのを教えてくれるって事は、君も結構乗り気だったり?」
「うわぁー、優等生なのにビッチとか、ヤバくね?」
明るい髪色とピアスを付けた男子達が、私を囲むように迫り、私は震えるしか出来ず、ふと場地君の言った言葉を思い出していた。
危機感がない。
本当にそうだ。情けな過ぎて、笑いさえ起きてくる。
「んじゃぁ、楽しもっか?」
可愛い子ならともかく、私みたいなのに迫る人達の気持ちが分からず、掴まれた手を振り払って抵抗する。
「やっ! やめて、下さいっ!」
「何? そういうプレイが好きなの?」
「知ってる? 男って、抵抗されると余計やる気になるんだよ?」
「そーそー、男煽るだけだって」
いやらしく笑う人達に力で勝てるわけもなく、床に組み敷かれてしまう。
抵抗してもビクともしなくて、涙で滲む視界。
助けて、誰か。
そう思っても、誰も助けてはくれなくて、叫ぼうにも口を塞がれていて声が出せない。
制服のボタンが外されていく中、暴れながら頭を支配するのは、場地君の顔だった。