第2章 シキミ
西村達とダムへ行く話をしながら帰宅途中に蜘蛛の巣に引っかかっているカエルを助けた。
すると、ぐしゃぐしゃと奇妙な音がすると思い音のする方木の幹に目を向けると、真っ黒でひょっとこ面のような眼だけが妖怪を食べていた。
「人のにおい。我を見たな。食ってやる」
黒い手を伸ばし腕をつかんできた。
やばい。このままではやられてしまう。一目散に逃げる。
後ろから「食ってやる、食いに行くぞ」怨念ががましく声が追いかけていた。
にゃんこ先生に聞いてもらわなければ。
「おかえり貴志君。あらどうしたの?顔色が悪いわ」
「ただいま。そうですか?」
やっとの思いで家に帰ると塔子さんは台所で晩御飯の用意をしていた。心配の声をかけてくれたが、面倒事に巻き込みたくなくてとっさに「別に何も」と返した。
逃げている途中から気が付いた腕に浮き出る赤黒い紋は禍々しくうっすらと光っているように感じた。見える見えないは置いておいても塔子さんには後ろめたい気持ちがあった。
「夏目、帰ったか?」
「にゃんこ先生。」
「今日はイカのフライだな。いい匂いだ。いかはいかが」
「猫はイカ食べちゃダメなんだぞ」
猫ではないと言っておろうがと少し怒りながら近づくにゃんこ先生。
「んどうした。どうした夏目その痣は?」
白い猫のような手が痣に触れるとまるで電撃でも走ったかのかように毛並みの逆立ててしびれている。
少し毛先が焦げている。
「お、おまえ!腕に呪いを受けたな?」
そういいながらにゃんこ先生は縮んでいった。
ふふ。面白い。にゃんこ先生がそのまま手乗りサイズになってしまったのだ。
「笑い事じゃないぞ!」
そのまま晩御飯を食べイカフライをにゃんこ先生に献上しながら帰り道でのできごとを話した。