第2章 シキミ
イカフライの真ん中で嬉しそうに頬張るにゃんこ先生。
珍妙な光景だな。
「まったくこの私の獲物に手を付けるとはけしからん。しかも食うだと普段ならなありがたいが今の私ではそいつに横取りされんからな。」
そんなイカフライの真ん中で偉そうにされても説得力がないよな。友人帳の心配のが俺より上をいくのか。
とりあえず今この状況をどうにかしないと学校にも行くことが難しい。
「しょうがないな。私の代わりに用心棒を呼び出すか?」
「そんなことができるのか?」
「レイコが自慢げに話しておったわ。」
おなかが膨れたのか文字通り小さなおなかをぱんぱんに膨らませ、にゃんこ先生は呼び出しの儀をやり方を教えてくれた。
塔子さん達が寝たのを見計らって家の裏手の林に入り、木の枝で陣を書く。見本もなければ知識もないのでにゃんこ先生の言う通りに書いてはいるつもりなんだが、如何せん不安だ。
「こんな感じか?」
木の上に乗り高みの見物をしているにゃんこ先生に呼びかける。
「いいだろう。次に白い布を羽織って陣の真ん中に立て。」
なんでも白い布は白衣の代わりなんだそうだ。古の儀式のためそういった条件が多いのだろう。シーツを羽織り陣真ん中に立つ。
「顔と名前を知らねば呼べぬからこの間の三篠を呼び出してみるか?夏目、鏡と友人帳を置いて血を落とせ。」
「血?」
「本来なら生爪の一枚でも欲しとこだ、妖相手に代償なしで済むと思うなよ。」
それもそうか。今はにゃんこ先生に従うしかない。
指をかみ鏡に血を落とす。
「我を守りしものよ。我が元へ来たれ。汝の名、三篠。」
手を合わせ意識を集中させる。名を返す時に似ているような感覚だ。
友人帳がパラパラと捲られ一枚がピンと張り詰める。そこから煙が立ち込めるとあの鈴の音と主に三篠が現れた。