第1章 コルチカム
昨日はそれからどうすることもできないということで別れた。さんも用事があるらしく案外すぐに引き下がってくれた。
にゃんこ先生には一連の話をしてみたが、三篠には特に仕えている人間など聞いたことはなかったらしい。
不思議な人だった。
「おはよう夏目!今日は体調よさそうだな。」
教室に入ると明るい髪色で僕より少し背の低い西本と短髪で落ち着きがある北本が手を上げ呼んでいる。ここ最近寝不足のせいか顔色が芳しくなかったのを心配して毎朝体調を確認してくれる友達は本当にいいやつだと思う。
二人は妖のことを話さなくて普通に接してくれているいい友人だ。
挨拶を返しながら自分の席に着くと廊下側の席に座っている彼女に目線を向けてしまう。
昨日の出来事もあってか、つい気にかけてしまう。
彼女は静かに本を読んでいた。隣のクラスメイトや大声で話をしている人たちに特に目を向けるわけでもなくただ一人で座っている。浮世離れした雰囲気に近づきづらいような気もする。
「おぉなんだ。夏目も色恋に目覚めたか?」
ニヤニヤと茶化した顔でさんに目を向ける西村は確かにミーハーなところがある。
「そんなんじゃないさ。ただ…」
説明しずらい昨日の出来事をどう伝えようかと口を濁らす。
「 さん。あまり詳しいことは知らないんだけど神社の娘さんだよ。」
「すらっとしていて美人だよな。まぁあんまり目立つような子じゃないよな。」
「さんって神社の人なのか。」
「お前いつから名前で呼ぶようになったんだー!」
あまり人付き合いが得意ではない僕の代わりに教えてくれる友人には再度感謝だな。
正直妖を見えるということを共有できるのはすごくうれしくて、話をしてみたい。
自分から話しかけてみようか。