第1章 コルチカム
「主様に救ってもらったから。主様のためになるならなんでもしたい。だから主様の名前を返してほしい。」
「主様っていうのは誰のことなんだ。名前が分かれば返せるだろう。」
「主様の名前は・・・三篠様・・・」
「三篠?あの大きな妖に仕えているのか?」
僕の言葉を肯定するように彼女は頷いた。三篠は田沼の一件で出会い名を返しそびれてしまったが人を操るような悪い妖には見えなかったが、自分が来ることができないことでもあったのか?
彼女は操られているのか?でも仕えていると言っていたならば彼女なりの善意として返してほしいのだろう。
つまり彼女は妖が見えているのか?
「夏目・・・その大丈夫?」
つい考え込んでしまったのだろう。一点を見つめて静かになってしまった僕を心配そうにのぞき込む。
「えっと、」
そういえば彼女の名前を知らない。一度聞いたことがあったような気がしたが覚えがない。
「自己紹介がまだだったね。。苗字はあまり好きじゃないから名前で呼んで。」
「さんはその、、、見えるのか?」
分かっていることだが、確認せずにはいられなかった。でも昔からあまりいい経験をしていなかったからなのか、確信的なことは聞けず遠回しな聞き方になってしまったがその意図に気づいてくれたのか「えぇ。」と僕の目を見て答えてくれた。
「はなぜ三篠に仕えているんだ?」
「夏目は質問ばっかりね。さっきも言った通り、三篠様におすくいになってもらってから」
「じゃあ、自分の意志ってことか?」
「当たり前じゃない。だから名前を返してほしいのだけれど」
「悪いが妖が直接来ないと返すことができないんだ」