第1章 ヴァンパイアパロ1
「フェリシアーノ貴様あぁっ!!」
「ひぎゃっ!?」
聞き慣れた怒号が響き、体がパッと自由になった。
うしろから私をひきあげた人物を見上げる。
そこには、これでもかと厳しく眉をつりあげるルートヴィッヒがいた。
「になにをしている!」
「ヴェヴェ!? ルートなんでここに――」
「やはり心配になってな。兄さ――兄貴に任せて来てみれば案の定……おい、しっかりしろ」
「過保護だなコノヤロー」
「なっ!? かっ過保護などではない!! 大丈夫か」
ぺちぺちと頬をたたかれる。
だんだんと意識が明瞭になっていく。
すると背中から思いっきりルートヴィッヒに寄りかかっていたことに気づき、あわてて姿勢をただした。
彼は、私がなんともないようだと悟ると盛大なため息をつき、
「まったくいいようにやられて、ハンターとしての自覚はあるのか? だいたいお前は無防備すぎるんだ。もう少し――」
「すみません、ほんとにすみません……」
くどくどとお説教が始まった。耳が痛い。
「なによりフェリシアーノ! “あれ”は立派な攻撃だとみなされるぞ。俺がこなかったらは――」
「ちょっとじゃれただけだよ~」
「なにが“ちょっと”だ! 次はないからな。ロヴィーノも止めてくれれば――」
「イヤミかじゃがいも野郎。馬鹿弟のあれは俺が干渉できるレベルじゃねぇんだよコノヤロー!」
ちぎー! となくロヴィーノ。
さっきとは打って変わって、まるで別人のように明るく笑っているフェリシアーノ。
……なんだか、とても疲れた。