第1章 ヴァンパイアパロ1
「それじゃさ、いい時間だしジェラートでも食べにいこ! 新しくできたいいお店見つけたんだ~」
「ええ!?」
なにを言い出すのか。
しかし、花が振りまかれたようなにこにことした笑みに言葉がつまる。
「俺ちゃんとルートと一緒にいってみたいんだ~」
「仮にも今は勤務中だ」
ルートヴィッヒが冷然と言い放つ。
それに、フェリシアーノが表情を変えないまま、声を落として、
、、
「そこでしか言えない情報があるとしたら?」
そう、囁いた。
ルートヴィッヒがわずかに目を見開く。
「まさか……」
「その、まさかだよ」
意味深な笑みを浮かべるフェリシアーノと、切迫した顔でなにかに考えを巡らせているルートヴィッヒ。
対照的なその様子に、私は首をかしげた。
鋼鉄のごとき意志をもつルートヴィッヒが、あんなに血相をかえるとは。
ただ事ではなさそうで、落ち着かない気分になる。
「無駄足にはさせないよ。じゃ、行こうか?」
「……仕方ない、わかった」
苦々しくルートヴィッヒは言った。
わーいと大げさなまでに喜び、二人は扉の方へ向かう。
私もその背中を追いかけると、がしっと腕を掴まれた。
「?」
手の主はロヴィーノだった。
なにかを言いたげに口を結んでいる。
ためらいが滲んだ緑色のきれいな瞳が私をまっすぐとらえ、その口がひらきかけ――
「兄ちゃん、抜けがけはよくないよ」
「っ!」
だがそれは、振り向かないまま言い放ったフェリシアーノにさえぎられた。
言われてロヴィーノは、不意をつかれたようにビクッととびあがる。
「ちっ、ちげぇよ!」
「どうした、一緒に行くぞ」
「はっ、はい!」
ルートヴィッヒに呼ばれ、私は歩き出した。