第1章 ヴァンパイアパロ1
やわらかな怒り、そして得体の知れない微笑を秘めたその声に、離れようと足掻く力が奪われていく。
「俺ずっとお願いしてたよね? けどちゃんまだ一度も呼んでくれてない」
「う……あ……」
「なのにルートもギルも名前だよね。どうして? あの二人は名前で呼べて俺は呼べないの? 俺よりもそんなに二人のこと好きなの?」
「おち――ついて――」
肩甲骨あたりにあった手が、ゆっくりと首へ這っていく。
「答えてよちゃん」
その声に、背筋が凍りついた。
す、と髪を梳かれる。
それに従うように、体全体の力が抜け落ちていく。
毒が静かに効いていくがごとく、指のさきが弱く痺れはじめる。
彼に寄りかかって立っているのがやっとだ。
頭にもやがかかる。
脳が溶けたらこんなかんじなんだろうか。
次第になにも考えられなくなっていく。
けれど、これだけは明らかだった。
私は精神攻撃を受けている――