第1章 ヴァンパイアパロ1
「最近このあたりで、若い女性ばかりが狙われる事件が多発しているんです。なにかご存知ですか?」
そう言うと、ロヴィーノが顔をしかめた。
「俺たちを疑ってんのか?」
「あっ、いえ、そういうわけではなくて――」
「お前以外の血なんか興味ねーよ」
「……はい?」
ため息混じりに言われるが、理解が追いつかない。
「は? 今日は○曜日だろ」というような、当然とばかりの口調に、戸惑う自分がおかしいのかと疑い始める。
えーと、お前以外の? あーなるほどなるほど興味がないということですね?
「――ってなななに言ってるんですか! 変態ですかっ!? もう一回言ったら許しませ――」
「だからお前以外の――」
「いやあああああ聞こえない聞こえないなにも聞こえない」
「ちゃんかわいー」
「ぎゃあああああああ!」
ジンジン熱を帯びている耳をおさえていると、フェリシアーノがここぞとばかりに抱きついてきた。
両手が耳元にあるままで使えない。
あわあわと抵抗してみるが、さっきと違って回されている腕の力が強い気がした。
訝しく思い、声をかける。
「……あの、ヴァルガスさん……?」
発した声があまりに覚束なく、自分でも驚いてしまった。
なぜか、温度のない汗が頬を伝う。
連鎖反応みたく、頭のはしで踏み切り音のような警鐘が鳴りだす。
「……ねぇ、いつになったら“フェリ”って呼んでくれるの?」
すぐ耳元で、そう囁かれた。