第1章 ヴァンパイアパロ1
目当ての小さなカフェを見つけ、扉をあけると鈴が鳴った。
その音を聞きつけたのか、目的の人物の一人がこちらを振り向く。
その顔がぱっと輝き、こちらに駆け寄ってきた。
「ちゃん!」
「あ、どうもこんにち――ふぎゅっ!?」
「こんなとこまで来るなんて、俺に会いにきてくれたの?」
「まぁ、そんなかんじですが……」
「本当? 嬉しいよー!」
「おおおおお仕事ですから! 離れて下さいっ!!」
会って数秒でここまで疲れさせるとは。
目の前の人物フェリシアーノは、実は物凄く強いんじゃないかと思う。
力の限り抱擁から逃れると、花が飛びかっているような満開の笑みが、物足りなさそうにしぼんだ。
天真爛漫そのものの彼。
だが、数いるヴァンパイア達の中で油断できない部類だと思っている。
杞憂だろうが、抱きつかれたままでいると、じゃれるように寝首をかかれそうな(吸血的な意味で)気がするのだ。
「……で、なんの用だよ」
つっけんどんに言ってきたのは、フェリシアーノの隣で憮然としているロヴィーノだった。
「ちょっと伺いたいことがありまして、派遣されてきました」
「いつも一緒にいる二人はどうしたんだ」
「ルートヴィッヒさんとギルベルトさんは講習会? かなんかの指導役として呼ばれてて」
「お前はそれに出なくていいのかよ」
「……あとでみっちり個人指導をしてくださるそうです」
「ヴェー……大変……」
「あの変態どもめ……」
「はい?」
自分で言っていて胃が痛くなってきた。
ついさっきの会話を思い出す。
『えええ!? お二人が指導役なら私も出たいですよ!』
『安心しろ、俺様があとでをたっぷり可愛がってやる』
『そうだな。じゃあ兄貴のあと、俺と座学を小一時間ほど復習するか』
『いや、あの、そこまでして頂かなくても……』
「はぁ…………」
心の底から愉しそうなギルベルトの笑顔を思い出し、盛大なためいきが出た。
それに、勉強の内容を考えだしたらしいルートヴィッヒの表情。
ふたつを脳からとっ払う。
私は気をとりなおして、二人に尋ねた。