第2章 偽物の関係でも
楽しいから、怖い。
好き合って付き合っているわけじゃないから。いつか終わりが来る関係で、偽りで。
この心地よい場所から離れたら、私はやっていけるのか。
最悪の場所へ、戻れるのだろうか。
私は断りを入れて、今いる溜まり場のような空き教室から、一番近いトイレへ向かう。
人気がないから、遠くから聞こえる生徒達の微かな笑い声以外は、私だけの足音が廊下に響く。
けど、それの他に足音が一つ。
「あれ? よぉ、久しぶりだな。相変わらず男漁ってんの?」
少し前に別れた男が、いやらしい笑い方でこちらに歩いて来る。
最悪な事に、この男は付き合っていた男の中で、割と暴力的な方だった。
私は咄嗟に後退る。
「逃げんなよっ……。丁度よかったわ。最近女と別れたばっかでさぁ、溜まってんだわ」
掴まれた腕が痛み、眉を顰める。
「ヤらせろよ。お前も気持ちよくなりてぇだろ? また前みたいにひぃひぃ啼かせてやるからさぁ」
この男に気持ちよくされた記憶はあまりないけど、私には抵抗する力はなくて。
振り解くには、あまりにも非力だった。
階段の陰に連れて行かれ、座らされる。
「おら、しゃぶれよ」
「ぇ……」
「ご奉仕しろっつってんの。別れてから、バカに磨きがかかったか?」
髪を鷲掴みにされて、男の股に顔を近づけさせられる。
「さっさとしろよ……殴られてぇの?」
低くなる男の声に、震える手で男のベルトに手を掛けて、上手くいかないながらも、必死でベルトを外してチャックを下ろした。
既に立ち上がり始めている男のソレに、顔を近づける。
「あー……やっぱお前のフェラ、最高だわ……めっちゃ気持ちぃー……」
無駄に身についた、褒められても何も嬉しくないスキルをフル活用して、早く終わるように必死に奉仕する。
「おらっ、喉奥もしっかり使えよっ……手伝ってやるから、よっ……」
「んぐっ、ぅ、ぇ……ふっ……っ……」
髪を掴まれたまま、もう片方で後頭部を押さえつけられ、喉の奥に差し込まれる辛さに、嘔吐いて涙が滲む。
何時間にも感じられる行為は、男の体が吹き飛んで、突然終わりを迎える。
「ごほっ、かはっ、こほっ……っ、はぁはぁっ……」
「っ! 大丈夫か?」