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貴方のお姫様に【東リべ夢】〘今牛若狭夢〙

第1章 ミステリアスな先輩




誰かが隣にいないと眠れなくなった体が、温もりを求める。

「一人は……寂しい、から……」

ずっと一人でいて、一人は寒くて、もう嫌だ。

何かを考えていた今牛先輩が、ベッドへ入って来る。

「これでいいか?」

添い寝するみたいに、隣りに横になった。

「もう一つ、わがまま言っていいですか?」

「何だ?」

「……腕枕、して欲しいです……」

また驚いて、でも何も言わずに言う通りにしてくれる。

何の香りなのか、本当にいい香りがする。

この香りと、温もりに包まれて目を閉じた。

知らない男と肌を重ねる不毛な行為もない、久しぶりに平和で落ち着いた夜だ。

嫌な夢も見なくて、その日はよく眠れた。

翌日起きたら、今牛先輩はもう起きていて、朝ご飯なんてものまで頂いてしまった。

本当にお母さんのような人だ。

「お前、毎日ウロウロしてんの?」

「……彼氏がいない時は、だいたいそうですね」

「やめる気、ねぇの?」

自分でも異常な行動だと、頭では分かっている。だけど、やめられないのだ。

やめられるなら、やめたいのはある。けど、やめないだろう。

「そう、ですね。今の所、やめられるとは、思えないですね」

苦笑する私に、相変わらず無表情な顔で、眠そうな目がこちらを見ている。

軽蔑するだろうか。普通なら、おかしいと思うのは当然だし、当たり前の反応だろう。

「なってやろーか、彼氏」

「……ん?」

「彼氏。いればやめんだろ?」

いやまぁ、それはそうなんだけど。

「あの……何でそこまで……」

「特に意味はない」

この人の考えている事が、分からな過ぎる。

「申し出はありがたいんですが、やめといた方がいいですよ。私、依存体質なので、万が一にも今牛先輩を好きになってしまったりなんかしたら、困るのは今牛先輩ですし」

同情や軽い気持ちで私に近寄るのは、あまりオススメしない。特に、今牛先輩みたいないい人は。

「私みたいな汚い人間に、今牛先輩は綺麗過ぎるので、ずっと一緒にいたら、絶対好きにならない自信がありません」

私は、立ち上がって今牛先輩に向き直る。

「色々お世話になり、ありがとうございました。私なら、大丈夫なので」

出来るだけ深く頭を下げて、私は今牛先輩に背を向けた。
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