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貴方のお姫様に【東リべ夢】〘今牛若狭夢〙

第1章 ミステリアスな先輩




手を繋いだまま、何処に行くのかすら分からず、ただ黙って着いて行く。

「寮か……。送って……って、お前が大人しくしてるわけねぇか……」

バレてしまった。

確かに、寮に帰ったとしても、私はまた徘徊する。それを見越してか、今牛先輩は、何か別の事を考えているようだ。

コンビニに寄った後、連れて来られたのは知らないマンションだった。

慣れたように入って行き、風呂場に連れて行かれた。

「……お母さんみたい」

ドラマや漫画でよく見る、世話焼きのお母さんみたいな今牛先輩に、少し笑ってしまう。

広くて綺麗なお風呂には、湯が溜められていて、体を洗った後ゆっくり浸かる。

久しぶりにこんなにゆっくり入るお風呂に、息を吐いた。

今牛先輩は、私を抱くのだろうか。

何故か、今牛先輩からは他の男みたいな“欲”のようなものを感じないから、妙な気分だ。

洗面台の鏡の前に立って、少し痩せている体にまだ少し残る痣に触れた。

元彼は、他人からは見えない場所を殴る人だったから、痣はだいたいお腹や腰に集中している。

用意されたパーカーに袖を通すと、ブカブカだった。

「いい匂い」

今牛先輩の匂いがする服に、鼻をくっつける。

抱かれるなら裸の方が楽なのにと思いながら、下は履かないで部屋へ戻る。

「…………」

脱衣場から出た私と、今牛先輩の驚いた顔がぶつかる。

何も言わず今牛先輩は脱衣場に入って、ズボンを手に取って私の足元にしゃがみ込む。

「脚、上げて」

言われた通りにすると、素早くズボンを履かされる。

そのまま手を引かれて、ベッドへ入らされた。

「ここにいた方がいいか?」

布団を首までしっかり掛けられ、今牛先輩がベッドの脇に座って私の頭に手を置く。

意味が分からない。これはどういう状況なんだろう。

「あの……エッチ、しないんですか?」

「はぁ? しねぇよ。黙って大人しく寝ろ」

頭を軽く指で小突かれ、また頭に手が置かれた。

穏やかで、静かな部屋のせいか、今牛先輩の手の温もりのせいか、少しだけ眠気はやって来るのに、まだ何か足りなくて。

今牛先輩の手に触れた。

「あの……」

「どうした?」

「隣に、寝てもらえませんか?」

「……眠れないか?」
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