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貴方のお姫様に【東リべ夢】〘今牛若狭夢〙

第1章 ミステリアスな先輩




私なんて、放っておけばいいのに。

「こんなとこで何してる。変な奴に着いてくなって言っただろ」

「今牛先輩こそ、ここで何を?」

「ダチとブラブラしてた。それよりお前、何でそんなに誰にでも着いて行く? 男に飢えてんのか?」

ハッキリ言われ、私は考える。

飢えなのだろうか。ただ、一緒にいてくれる、心を埋めてくれる人が必要なだけだ。

「さぁ……どうなんでしょう」

「はぁ? 何だそれ。もっと自分を大事にしろ」

今更、大事にするようなモノなんてない。

「いいか、声掛けられても着いて行くな。寄り道せずまっすぐ帰れ、いいな?」

ほんとにこの人は凄いな。世話好きが服を着て歩いてるみたいだ。

私は返事をせず、頭を下げて今牛先輩と別れた。

そして、やっぱりまっすぐ帰る事はしない。

「別の場所にしようかな……」

今牛先輩がいない場所に行くように、歩く。

キャッチではなく、ナンパされる為に少し治安は悪いけど、繁華街から逸れる場所へ足を向けた。

三人連れの男に声を掛けられ、ただ着いて行く。

デジャヴだ。

「嫌な予感がしたから着いて来てみれば……。お前……マジでいい加減にしろよ?」

聞き慣れ始めた声に、倒れている男達を目だけで見て、聞こえない程度に、私は今日初めてのため息を吐いた。

私なんて、放って置いてくれたらいいのに。

「じゃぁ、先輩が傍にいてくれるんですか?」

「あ?」

「そうじゃないなら、もう放って置いて下さい。私は自分から着いて行ってるので」

少し強めに言った私は、今牛先輩に背を向けた。

手首が掴まれる。

「一緒にいればいいんだな?」

「……は?」

「行くぞ」

手を引かれ、歩き出す。

ふわりと揺れたドレッドヘアから、いい香りがした。

無言で歩く街を、ただボーッと眺めている。

「腹は?」

「へ?」

突然話し掛けられ、変な声になる。

言われると、突然空腹を意識し始めてお腹が鳴る。

「腹まで正直だな。何か食いたいもんあるか?」

微かにだけど、今牛先輩がフッと笑った。

不思議な人。

まるで、他人に興味ないみたいな顔してるのに、妙にお節介と言うか、世話好きと言うか。

ご飯まで奢ってもらい、また手を掴まれる。
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