第3章 優しく愛でて、甘く溶かして
そう。私は今さら何をしたって、綺麗にはなれないし、普通には戻れないのだ。
どこまでも汚くて、醜い。
「私は、今牛先輩に優しくしてもらえるような、綺麗な女じゃないから……。普通の生活なんて、しちゃいけなっ……」
「誰が過去を消せっつった?」
「え?」
「誰がお前に、普通の生活をすんなっつった? いるならそいつら全員連れて来い」
今牛先輩の顔が、怒っている。
「俺が一回でもお前を汚ねぇって、普通じゃねぇって言ったか?」
私は首が取れるんじゃないかってくらい、何度も横に振った。
「過去なんて、他の奴等なんて関係ない。お前は俺の女だろ。なら、俺がいいっつってんだから、黙って俺の横に、傍にいればいい」
頬にゆっくり優しい手が当てられて、ふわりと柔らかい笑みが向けられる。
我慢していた涙が、ゆっくり零れて、それを今牛先輩の唇が追いかけた。
「っ……ふっ……ぅ……」
もう、胸がいっぱいで、気持ちが止められなくて、我慢出来なくなった。
「……き……好きっ……今牛先、輩がっ……す、ンんっ……」
私の告白は、掬い上げられるみたいに、今牛先輩の唇に奪われた。
キス、されている。
こんなにも甘くて、蕩けそうなキスは、生まれて初めてで、もっとというように、今牛先輩の首に腕を回した。
角度を変えて何度も繰り返される、普段は静かで冷静な今牛先輩からは全く想像出来ない、熱くて激しいキスに酔いしれる。
荒い息を吐いて唇が離れ、額がくっつく。
その時に合う、鋭くて熱い興奮の色をした目がたまらなくて、体が疼く。
こんなに本能から刺激されるような、血が騒ぐような体の疼きも初めてで、混乱してしまう。
「今牛先輩っ……私っ……」
何も言わず私の額にキスをして、今牛先輩は私の手を取って、足早に歩き出した。
家に着いて、玄関で素早く靴を脱いだ私を、突然今牛先輩は横抱きに抱き上げたまま、ベッドへ。
優しく降ろされ、今牛先輩が私の上に移動する。
「今までの男全部忘れるくらい、しっかり上書きするから、覚悟しとけ」
「……っ、は……ぃっ……」
どうしよう。凄く、興奮している自分がいる。
「んっ……今牛先ぱっ……」
「いい加減名前呼べ……。あー、ちなみに先輩はいらねぇ」