第2章 偽物の関係でも
付き合っていた人に言われた事がある。
『お前といると、たまにすっげぇ苛つく時あるわ』
自分ではよく分からないけど、私の態度は人を苛つかせるらしい。
「怒って、ますか?」
私の質問に、ジッとこちらを見ていた今牛先輩の手が、頭をワシワシと混ぜた。
「別に怒ってねぇよ」
笑った今牛先輩の様子に、少しホッとする。
この人には、出来るだけ嫌われたくない。
「頬、冷やさなくていいのか? それ、青宗のだろ?」
「あ……ほんとだ」
いつの間にか手に持たされていたハンカチを見つめ、洗って返さないとと考える。
「別に痛くもないし、慣れてるんで平気なんですけど。青宗君がわざわざ冷やしてくれて」
「慣れてるって言うって事は、やっぱり何かされたんだな」
しまった。口が滑った。
どうしてだか、今牛先輩の何も言わない感じが、口を軽くするというか、ボロが出て嘘が吐けなくなる。
「俺の知らないところで絶対何かされるな、お前は」
「うぅ……すみません……」
「謝るな。お前が悪いわけじゃない」
頭を優しく撫でられる。
関われば関わるほど、今牛先輩をどんどん好きになっていく。
「謝るより、何かあったらちゃんと言え。いいな?」
「はい……」
どうしてこんなに優しい人が、私なんかと一緒にいてくれるんだろう。考えても全く分からない。
最近当たり前になりつつある、自然と指が絡められらる行動に、ニヤついてしまう。
締りのない顔を引き締める。
「なぁ……お前、どっか行きたいとこあるか?」
「へ?」
突然聞かれ、思考が停止する。
「今度の休み、どっか連れてってやるから、考えといて」
これはデートと言うやつなのか。
今までの彼氏は、ヤるだけだったから、デートらしいデートをした事がないから、行きたい場所が思いつかない。
誰かに相談してみようかと、考えている私の頭に思い浮かんだのは、今牛先輩に似た彼だった。
放課後、今牛先輩の所へ行く前に、いいタイミングで青宗君を見つけたので声を掛けた。
「デートの場所? 人それぞれ好きな場所は違うからな。行った事ない場所とか、一人じゃ行かない場所に、後は二人が楽しめるような場所とかじゃないか? 俺もあんまデートとかしねぇから、参考にならないけど」