第1章 よいこにサンタは来るか
平日用に設定している不快な目覚ましの音がなる
仕事の始まりを告げる音楽なので、どんなお気に入りの曲にしても気持ち良くは起きられなかった
「うー、寒い」
部屋が冷え込んでおり、布団から出ることに絶望していると寝室に月島さんが居ないことに気付いた
「あれ……今日遅出って言ってたのに」
もしかして私と居るのが気まずくて早く出ることにしたのでは、とネガティブな思考がよぎり、慌ててリビングへ行く
「おはよう」
優雅にパジャマでコーヒーを飲む月島さんがいた
「おはようございます」
ホッとしたのを悟られないように返事する
月島さんが座っている前の机に、私が昨日枕元に置いたプレゼントの手袋があった
私の目線に気付いたのか、月島さんが手袋をつけて見せてくれる
「プレゼント嬉しかった、ありがとう」
「いえ、月島さん防寒具を何も持っていないのでどうかなーって思いまして」
「ポケットに手を入れれば済んでいたから買わなかったんだが、あれば助かるな」
「良かったです」
あ、もしかして今プレゼント貰える?
それで手袋を見せてくれて……
「お礼に飲み物入れるから、顔を洗ってこい」
ですよねー
月島さんがそんなお洒落なことするわけないですよねー
「……はーい」
肩を落としながら洗面所へ向かう
洗顔フォームを手に出して、蛇口を捻る
出てきた水でフォームを泡立て、顔につける
泡がまんべんなく顔に行き渡ったら、水を両手いっぱいに溜めて顔をすすぐ
ごしごししてはいけないとは知っているが、これがなかなか難しい
肌のバリアがなんちゃらなんだよな、確か
イライラしていると駄目だな、擦る力も強くなってしまう
顔の左頬に固い引っ掛かりを感じた
「………ん?
かたいひっかかり?」
左手を確認する
引っ掛かるようなものは何もない筈だけど……
左の手のひらを確認すると、薬指が光っていた