第1章 よいこにサンタは来るか
「つつつつ月島さぁん!!!?」
全速力でリビングに入ると、月島さんは私のマグカップを机の上に置いていた
「どうした?」
彼はとぼけた顔で聞いてくる
「指輪!!左手!!」
月島さんに向かって思い切りパーにした左手のひらを見せる
此方から見える手の甲には、薬指に、小さな石がキラキラと朝日で光っていた
「サンタ来たんだな、良かったな」
彼は柔らかく微笑む
あまりの嬉しさに、昨日のイライラなど吹っ飛んで抱きついた
「嬉しい!本当に嬉しい!!」
「よいこにはプレゼントが必要だからな」
「もう今年は何もないと思ってましたー!」
「昨日は本当にすまなかった」
「もう良いです
仕事は仕事だったんですもんね?」
「勿論だ、ただ上司の誕生日だったんだよ
それで同僚の一人がケーキとシャンパンを買ってきてな
仕事が終わった後に、乾杯だけしたんだ」
なんだ、誕生日ケーキだったのか
てっきりクリスマスケーキだと思ってた
「そうなんですね
そうならそうと言ってくれればあんなに怒らなかったのに」
「すまんすまん
初っぱなから相当怒ってたんで、何を言っても無駄かと思ってな」
「だって、私とクリスマスを祝うより会社の人と祝う方が楽しくて帰ってこなかったのかと思ったんですもん
……それにサンタもスルーされるし」
「スルーしたか?」
「しました!
いまいちな反応でしたし!」
「あー……、すまん」
月島さんは気まずそうに頭をかいた
「指輪をどうやって渡すかばかり考えていたから、正直上の空だった」
「えっ」
何それ可愛すぎる
「可愛いとは思ったぞ?
でもゆめもすぐ脱いだじゃないか」
「いやいや、それは月島さんが微妙な反応だったからですよ」
「そうか、俺のせいか」
「もしかして私があそこで寝に行かなかったら、指輪貰えてたんですか?」