第1章 よいこにサンタは来るか
「その服装……」
靴を脱ぎ終わった彼が話しかけてくる
「ああ、浮かれてサンタのコスプレとかしちゃいました」
ああ、もっと可愛くアピールするはずだったのに、可愛くない言い方だ
「クリスマスだもんな」
「なんか…、感想とかあります?」
「……、可愛い可愛い」
月島さんはいつもの能面顔で言うと、私の頭をひと撫でして終わった
お世辞の可愛いが出るまでの間は、我慢が出来ない故な感じでは無かった
「あははは」
今の間は何ですか?イタいって事ですか?
とは怖くて聞けなかった
黒歴史決定だな、これ
ひきつった顔で笑いながら、月島さんを置いて寝室へ入る
彼は入ってこない
月島さんがほどく筈だったリボンを自分でほどき、サンタの服を脱ぐ
中に履いていた可愛い下着がより虚しさを醸し出した
「(って言うか何?
仕事だとか言っときながら、お酒呑んでケーキ食べてたってこと?
彼女を差し置いて、会社で誰とクリスマスを祝うの?)」
だんだん腹が立ってきたので、可愛い下着も全部脱いで色気の無い楽な下着に着替える
「(もしかして、楽しみにしてたのって私だけ?)」
リビングにいる筈の彼は静かで、何をしているのかと見に行く
彼はコートだけ脱いで、ソファに座ってうとうとしていた
「月島さん、風邪引きますよ」
「っお」
「風邪引きますよ、起きてください」
「あー、すまん」
しんどそうに立ち上がる
そんなに呑んできたんですか?
それとも、私とこれからクリスマスをするのがしんどいんですか?
「なんだ、さっきの服脱いだのか?」
「はあ、まあもう見せたかっただけなので脱ぎました」
嘘ですけど、沢山期待してましたけど
「ははは、可愛いこと言うな」
嘘つき、引いてたくせに
「ご飯食べられそうですか?」
もうなんか、乾杯って雰囲気じゃないけど
「食えるぞ、食えるけどちょっとだけ先にしたいことがあってだな……」
「え、まだ何かあるんですか?」
「えっ」
あ、しまった
言ってしまった
月島さんは驚いていた
「無理して食べなくて良いですよ
明日も仕事ですし」
「いや、明日は遅く出勤しても良くなったんだ
だから…」
「私は仕事なんです」
「……すまん」