第1章 アイチと櫂、謎の秘境の山地へ
狐にでも化かされたかと感じたアイチと櫂は、拾った木の枝を持って三和たちのところに戻ろうとしました。そのときです。
「おーい」
と、また声が聞こえてきました。
「あっちだ」
櫂にも声が聞こえ、拾った枝をその辺に置いて走り出します。アイチも枝を置いたあと、櫂を追いました。
二人が山道を走っている途中、先に走っていた櫂が坂道で転びそうになり、アイチが助けます。
「櫂くん、危ない」
「おかげで転ばないで済んだ」
櫂は微笑し、お礼の気持ちを伝えました。
「良かった」
「アイチ」
「どうしたの? 櫂くん」
「ここは、オレたちが来ていた山か?」
「え……」
櫂に言われ、アイチが周りを見渡すと、崖が広がっていたのです。アイチと櫂はいつの間にか、崖の下にいました。
「崖なんてなかった。オレたち、本当に狐にでも化かされたのかもな」
「そんな……。じゃあここって……」
「声の主を追っているうちに、秘境の山地に来てしまったのかもな」
「ウソだ。ボクたち、そんなに走っていないよ」
信じられないでいたアイチに、櫂はさらに声のトーンを落とします。