第6章 USJ
「バスの席順でスムーズにいくよう、番号順に二列で並ぼう!」
非常口の一件からフルスロットルな飯田が、謎のホイッスルを吹きながら指揮を取った。ーーのだが、
「こういうタイプだったくそう‼︎」
「イミなかったなー」
バスは、飯田が想定していた2つ座席が運転席を向いてる構成ではなく、長椅子の向かい合わせが大半を占める座席だった。
「轟くん、窓側いいよ」
「ああ、悪いな。」
エマと轟が隣らしい。
前方の座先に座っていた耳郎は、それとなく視線を後ろに回す。
「面良っ‼︎」
全身の色彩が白っぽいエマと、クラス随一のイケメン、言うなれば氷の貴公子は絵になる。前世で王子様と姫…もしくは近衛兵とそれの関係でも驚かない。
耳郎は初日から、完全にエマのファンと化していた。もっとも本人にその自覚はない。
「派手で強えっていったら轟と爆豪だな」
「ケッ」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそ」
まだ出会って数日。出来る会話は限られていて、どうやら今は互いの個性の話のようだ。
曰く「思った事を何でも言っちゃう」蛙吹が辛辣に爆豪を弄る。
「んだとコラ出すわ‼︎」と案の定彼は沸騰した。
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「テメェのボキャブラリーは何だコラ。殺すぞ‼︎」
「派手で強いってんならエマもだよな。」
上鳴と爆豪の会話をBGMに隣の轟の寝顔を見ていたエマは、 瀬呂に言われて目を丸くした。
「ビジュでも人気出そうだし、怪力とバリアの個性だと汎用性抜群。引っ張りだこってやつ?」
「あー 瀬呂がエマちゃん口説いてるー‼︎」
「そんなんじゃねーよ‼︎」
エマは内心、ホッとしていた。
芦戸が瀬呂に茶々を入れてくれなかったら、「同級生が個性を勘違いしてるにも関わらず訂正しない」様を相澤先生に見られるところだった。
「瀬呂くんも、素敵なヒーローになると思うよ。」
真っ赤な顔をした瀬呂が、芦戸だけでなく葉隠にまで揶揄われるのを横目に、エマはまた轟の寝顔を見ていた。