第6章 USJ
ドガっという鈍い音。
「かはっ…」
防御が間に合わなかった。
完全無防備‼︎
脳無の重たい拳に肋骨がミシミシと音が鳴る。肺に骨が刺さったか、口に血が上ってきた。
「しくったかなあ…」
そのまま視界が暗くなる───────。
「エマちゃん‼︎‼︎」
耐えきれず、緑谷は隠れていた水辺から飛び出した。
エマちゃん、救けて逃げて…‼︎
「脳無」
「SMASSH──‼︎」
今まで骨も筋肉もボロボロになる諸刃の剣だった。
憧れのヒーロー・オールマイトの必殺技。
計画性も何も放り投げて、ただ救けるための一撃だった。
折れてない‼︎?
力の調整がこんな時に‼︎やった…
と、少しの希望に顔を上げた。
「え……」
緑谷の目の前に映っていたのは、何ひとつ傷のない、おぞましく黒い巨躯。
効いてない…⁉︎
緑谷の脳裏には、先刻まで一緒だった蛙吹の言葉がよぎった。
『殺せる算段が整ってるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?』
───────
「いい動きをするなあ…スマッシュって、オールマイトのフォロワーかい?」
ニヤリと、膝立ちしていた死柄木が立った。
「厄介だったけど、本来の量の半分も俺に盛れなかったんだろ。まだ痺れるけどもう動ける。」
脳無の、死柄木の、恐ろしい魔の手が緑谷たちの眼前に迫って、逃げ場はもう無い。無かった。
ここにちる全員、死ぬ───…
途端、バアンと、USJの扉が大きく吹っ飛んだ。
「もう大丈夫、私が来た」
平和の象徴、最高で最強のナンバーワン。
オールマイトその人である。
「オールマイトーーー‼︎」
「あーー…コンティニューだ」
死柄木は不気味に口角を上げた。