第5章 いいぞガンバレ飯田くん!
食堂、非常口前にて。
「皆さんストップ‼︎ゆっくり‼︎ゆっくり‼︎」
「つかやべーよ、耳郎と癒守見失っちまった‼︎」
切島と上鳴である。
侵入者の警報により、非常口前は大パニックを起こしていた。
別のところで昼食を食べていた緑谷、飯田、麗日も例外ではなかった。
飯田は人に揉まれながらも、麗日の個性『浮遊』により、EXITと書かれた看板の上に見事、奇妙なポーズで着地したのだった。
「大丈ー夫‼︎ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません、大丈ー夫‼︎
ここは雄英‼︎最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう‼︎」
卍の字でそう叫んだ飯田のおかげで、食堂の喧騒は収まったのだった。
人混みが少しずつ緩和されていく中で、心操は消えそうな声で聞いた。
「俺…悪い、余計なことを」
「ありがとう」
「は?いや…なんでお礼なんか」
あまり頭が働かない。
もうその必要はないのに、心操はエマを守るように壁に手をついた状態から動かなかった。
「私を助けてくれようとしたから」
「いや、結果悪い方に巻き込んだだけだ…ヒーロー失格だ」
「ヒーロー?」
「いやなんでもない、忘れてくれ。」
「最初から出来る人なんていない。やってみなきゃいつまでも出来るようにはならない。──────だから、ありがとう。」
そう言うと、壁についたままの心操の手を外した。
心操が顔を少し上げると、逸らしていたあの目がまた合って、エマはニコと笑った。
そしてそのまま、他には何も言わずに去ってしまった。
一方、雄英高校入口。
「ただのマスコミがこんなこと出来る?」
雄英は本来、マスコミが入ろうと思ってそう出来るほど甘いセキュリティではない。
ボロボロに崩れた鉄塊がとても不気味だ。
「そそのかした者がいるね…邪な者が入り込んだか、もしくは宣戦布告の腹づもりか…」