第4章 個性把握テスト、戦闘訓練
轟vs癒守ーー
「悪いが、女子だからって容赦しねえぞ…‼︎」
「そっか…それは何より。」
轟の右側からシュウッと冷気を纏った。その瞬間…
「ッ!」
轟が発生させた氷を拳で粉砕しながらエマは一気に距離を詰め、掌底を顎下に叩き込んだ。
ぐわんと脳が揺れ、轟の意識は飛んだ。
「…ちょっと強く入れすぎたかな、ごめんね」
よいしょ、とエマは轟を持ち上げて、建物内に消えていった。
障子vs尾白ーー
「尾白、すまないが勝たせてもらう。」
「くっ…‼︎」
「尾白くん‼︎」
序盤は互角だった障子と尾白も、動けない葉隠をのいる尾白は時間と共に不利になっていった。結果、尾白は障子の重い一撃を貰い、もう起き上がれなくなった。
ヒーローチームは勝つために敵を捕獲する…。
そのために、凍って動けない葉隠と尾白に近付く障子。
「悪いな」
「…いや、謝るのは俺の方みたいだ」
どうしてこんなに近付かれるまで、気付かなかったのか。
先程と同じだ。
障子は後ろを見れなかった。
「ヒーロー、尾白くんと葉隠さんから離れて、膝をついて手を後ろに。」
障子はその平坦な声に従わなかった。
ここからでも何か…勝ち筋が。
そうだ、勝ち筋といえば
「癒守、轟は…どうした。」
「君が振り向いたら分かるよ。」
障子はゆっくりと、声の方を振り向いた。
エマの右腕に、轟が抱えられていた。
「轟…‼︎」
「ヒーロー。投降しなければ、彼の安全を保障しない。」
エマは太腿のポーチからシリンジを取り出して、さもそうするのが当然のように、轟の首元に針を当てた。中には透明な液体がゆらゆらと揺れている。
障子には分かっていた。その中身は毒である筈はない。
しかし、ここでそれを利用して核を奪還しようとするのは、敵に人質にされた轟を見捨てることに等しい。
それこそ八百万の言った、訓練という甘えから生じた反則のような勝利になる…。
「参った。」
障子には、それ以外の選択はなかった。