第4章 個性把握テスト、戦闘訓練
「ご機嫌よう、ヒーロー。」
障子は声の方向を見れなかった。
「障子!先に行け‼︎」
轟が氷を走らせ、障子とエマを分断した。
一瞬戸惑う障子だったが、エマは止める気配もなく、轟を見据えていた。
「すまん轟、任せる‼︎」
轟とエマを横目に、障子は建物内へ駆けて行った。
「止めなくていいのか?お前がなんで無事だったのか知らねえが、あとの2人は違うだろ」
「いいんだよ、訓練だもの。…私だけが独り占めするのは、ズルいでしょう?」
「随分と余裕だな。女だからって容赦しねえぞ…‼︎」
轟がまた氷を走らせた。
エマはそれをひらりとマントを翻して躱し、轟との距離を一気に詰めた。
跳躍したエマがそのまま繰り出した左脚を右手で受け止めたが、儚げな外見とは裏腹に想像以上の威力ーー勢いを殺し切れずにバランスを崩した轟に、右脚の更に重い追撃が襲い掛かり、轟の身体はビル屋内に吹っ飛ばされた。
「君みたいな範囲制圧タイプは屋内で相当気を遣う…最も、君が気を遣ってるのは別の部分かな。」
「何の個性だ…パワー系か?」
「内緒。」
ーーモニタールーム。
「轟やべぇ…」
「癒守もやべぇよ…あの見た目でパワータイプとか詐欺だろ…‼︎」
「でもこれヴィランチーム負けじゃねえの。障子先に行かせちまったら…」
先程、エマに強烈なセクハラをかまし、脳内で邪な妄想を繰り広げていた峰田は戦慄した。ーー搾りたて葡萄ジュースにされる‼︎
「(いや、少年少女よ。あの子の恐るべきは、その”個性”ではない…)」
ーーフロアに残った葉隠、尾白。
「葉隠さん、脚どこ⁈」
「ここ、ここだよ〜‼︎早くしないと障子くん来ちゃう!」
その障子はすぐそこにいた。
エマがあっさり障子を通したので、罠を警戒したのだが…。
これまで何の妨害も無い。氷から脱出したらしい尾白も葉隠のカバーで手が一杯。
轟を信頼しない訳ではないが、癒守が追いついたり、葉隠の氷が溶けて多対一になるのが一番良くない。
「済まないが勝たせてもらう…!」
「くっ…」
尾白の尻尾と、障子の複製腕がぶつかる…‼︎