第4章 個性把握テスト、戦闘訓練
逆立った髪が、相澤先生の心情を表すようだった。
「見たとこ…個性を制御できないんだろ?また行動不能になって、誰かに救けてもらうつもりだったか?」
「そっ、そんなつもりじゃ…!」
「どういうつもりでも、周りはそうせざるをえなくなるって話だ」
首にマフラーのように巻かれた布で、相澤先生は緑谷を捕縛した。
「昔、暑苦しいヒーローが、大災害から一人で千人以上を救い出すという伝説を創った。」
エマは、彼とウマが合わないと語っていた保護者の姿を思い出していた。
…私も、合わない方かな。
「同じ蛮勇でも…おまえのは一人を救けて木偶の坊になるだけーー緑谷出久、お前の力じゃヒーローにはなれないよ」
言い放つだけ言い放ち、相澤先生は目薬をさしていた。
…どっちに転んでも見込みはない。
「見込みゼロ…」
相澤から指導を受けた緑谷は、ブツブツ呟きながら円の中に戻る。
麗日は、どこか恍惚とした表情でその緑谷を見つめるエマを見ていた。
「今、僕に出来ることを‼︎」
『SMASH‼︎』
先程の弾道とは明らかに違う。
計測器の数字はーー705.3mと示していた。
力任せの一振りじゃなく、指先にのみ力を集中させたのか…‼︎
「先生…!まだ…動けます。」
「こいつ…!」
エマは満足そうに笑みを浮かべながら、緑谷を見つめていた。
彼女が小さく呟いた、「嗚呼…いいなぁ」という声を聞いていたのは、近くにいた青山だけだった。