第4章 個性把握テスト、戦闘訓練
指先にのみ、体が自壊するほどの超パワーの個性を使った緑谷に、見込みゼロと判断していた相澤先生も表情を変えた。
それとは別の意味で、表情を変えた人がもう一人。
「ワケを言えデク、てめぇ‼︎」
ボボッと個性で加速しながら、緑谷に突進をかます爆豪。
先程のとは裏腹に、その爆豪を見た瞬間にエマの表情がすっと落ちた。
「んぐぇ‼︎ーーぐっ…んだこの布、固っ…‼︎」
緑谷にも使っていた首元の布を使い、相澤先生は爆豪を捕縛した。
「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器だーーったく、何度も個性使わすなよ…」
赤い眼がギッと見開かれた。
「俺はドライアイなんだ」
「個性すごいのにもったいない‼︎」
「癒守、それ治すなよ」
「…はい」
本人にそのつもりは全くなかったが、相澤先生は何故か、エマを名指しして釘を刺した。
半ば不服そうに彼女は返事したが、その目線は相澤先生ではなく、爆豪に注がれていた。
ーーー
「んじゃパパッと、結果発表」
ボール投げでは、良い意味で相澤先生の期待を裏切る結果を残した緑谷だったが、その後の種目は痛みと戦いながら、これといった記録も出せず、全種目を終了ーー…
「トータルは単純に、各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する。」
相澤先生が表示した順位を、おそるおそる見上げたーー。
1 癒守 エマ
2 八百万 百
3 轟 焦凍
…
20 峰田 実
21 緑谷 出久
トータル最下位が除籍……!
「ちなみに、除籍はウソな」
こともなげに相澤先生がそう言い、生徒らの空気がピシっと固まった。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
「はーー‼︎⁇」
「あんなのウソに決まってるじゃない…ちょっと考えればわかりますわ…」
黒髪のポニーテールの女子生徒がそう言ったが、エマは八割がた”それが”嘘だろうと確信していた。
「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから、目ぇ通しとけーーー緑谷。」
呆然と立ち尽くす緑谷に、相澤先生はピラッと用紙を手渡した。
保健室利用書、という文字が見える。
「ばあさんのとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ。」