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【ヒロアカ】19Hzの瞳孔

第3章 入学


「いずくん」

「いずくんは、きっと成功する。」


ーーー
当時の僕たちは4,5歳で、「いずくくん」とは舌足らずで言えなくて、”く”がくっ付いた。

もうひとりの幼馴染、かっちゃんーー爆豪勝己は、やれば何でも出来てしまうタイプで、ガキ大将の乱暴者。
良し悪しは兎も角、自信に満ちたかっちゃんは憧れでもあったが、個性が発現してからは、それが悪い方向へ加速した。




僕たちの出会いは、その街で一番広い公園。

ヒーローごっこをするかっちゃん達に、無個性の僕は入れなくて、たった二つのブランコに並んで、漸く空いたそれに乗ろうとした。

「邪魔だ、デク!」

突き飛ばされて肘を擦りむいた。痛みで目に薄い水膜が張られたのが分かる。

「酷いよ、かっちゃん‼︎」

「アァ?んだよ!」

掌をこちらに向けて、バチバチと爆破して見せられて、今日も僕は何も言えずに俯いてしまう。
悲しさとか、悔しさとか、色んなものが込み上げてきて、それらが全部涙になった。



「ア?なんだお前」

かっちゃんの声に顔を上げると、三つ編みをした白髪の少女が目に入った。髪と同じ色の睫毛が長く、その奥の蒼の目がまっすぐかっちゃんを射抜いていた。

たしか、同じ幼稚園の癒守エマちゃんだ。

その子が、漕ぎ始めようとしていたかっちゃんのブランコを止めていた。


「順番、その子が先。」

「は?急に出てきて何だよお前!」

「君、大丈夫?」

「無視してんじゃねえ!」

ブランコに手を掛けたまま、こちらを見て首を傾げる。
この時から僕は女の子に不慣れで、顔が熱くなった。

「爆豪勝己くんだよね。」

「んだよ!」

かっちゃんの怒鳴りも意に介さずに、自分のペースで話を進める。
初めてかっちゃんと対等に話せる人に出会った僕は、あわあわしながら二人を見ていた。

「ヒーローになるなら、”そういうこと”は君の足を引っ張るよ」

「〜〜っ‼︎」

何も言えなくなったかっちゃんの、ブランコを掴んでいた手が緩んだ。その手をエマちゃんは掴んで立たせると、僕の方にそのまま引っ張ってきた。

「はい」

エマちゃんは、僕とかっちゃんの手を掴んで引き寄せた。
何を、とは言わなくても分かった。


「わ、りぃ…」

「う、うん…」

不思議な、仲直りの握手だった。




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