第3章 入学
僕、緑谷出久の恐怖の象徴…2トップは、入学初日にも関わらず言い争いを繰り広げていた。
眼鏡を掛けた入試の彼は、「どこ中だよ、端役が!」という投げかけに律儀に答える。
「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
入試の彼は、飯田天哉というらしい。
「聡明〜〜⁉︎くそエリートじゃねえか。ブッ殺し甲斐がありそうだな‼︎」
「ブッコロシガイ⁉︎君ひどいな、本当にヒーロー志望か⁉︎」
中に入れず様子を伺っていると、こちらに気付いた飯田くんがスス…と寄ってくる。
「俺は私立聡明中学の……」
「聞いてたよ!あーっと、僕緑谷。よろしく飯田くん…」
「緑谷くん…君はあの実技試験の構造に気付いていたのだな。俺は気付けなかった…!!君を見誤っていたよ!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」
ギリ、と悔しそうに言う飯田くんに、気付いてなかったよ⁉︎と心の中で訂正する。
「あ!そのモサモサ頭は!!」
後ろから入ってきたのは、入試で会った良い人だった。制服姿やっべええ‼︎と噛みしめる。
「プレゼントマイクの言ってた通り受かったんだね‼︎そりゃそうだ、パンチ凄かったもん‼︎」
「いや!あのっ…!本っ当あなたの直談判のおかげで…ぼくは…その…」
「へ?何で知ってんの?」
自分でも顔が赤いのがわかる。熱い。ほんとうに女子に免疫がないんだ…
ーーー
「やっぱり、いた。」
声の方を振り向いた途端、ふわっと甘い香りに包まれた。
次に柔らかい感触…
「〜〜〜‼︎」
声にならない声が出た。
女の子、だ。スカートを履いている。
その人に、抱きしめられている。
顔は見えないが、ふわふわの白い髪が当たって擽ったい。
「ここで会えるんじゃないかって思った…緑谷、出久。」
噛み締めるように名前を呼ばれる。表現するならば、澄みきった刃物みたいな声、だろうか。
声からはクールめな印象を抱く。
「どっ、どこかでお会いしましたでしょうかっ⁉︎」
「すぐ気付いてくれると思ったんだけどな。ーーいずくん。」
抱きしめていた腕が緩んでいき、女の子と目が合った。
途端に呼吸の仕方を忘れた気がした。
その、ひどく深い蒼から目を逸らせなかった。