第3章 入学
「エマちゃん…?」
僕がおそるおそる言うと、彼女はふわっと笑った。
蚊帳の外になりかけていた麗日さんが、少し顔を赤らめながら聞いた。
「2人は知り合いなん?」
「幼稚園いっしょ。」
「運命の再会や!私、麗日お茶子です!」
「癒守エマ。よろしくね」
「今日って式とかガイダンスだけかな?先生ってどんな人だろうね、緊張するよね」
はしゃぐ麗日さんを見ながら、エマちゃんは「うーん」と言いながら、麗日さんの後ろの方を一瞥したような気がした。
「今日の日程はよく知らないけど、先生ならすぐに会えると思うよ」
エマちゃんの言葉に答えるように、低い声がその場に響いた。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行けーーここは、ヒーロー科だぞ」
そう言うとヂュッ‼︎と一息にゼリー飲料を飲み干した。某掃除機もびっくりの吸引力。
髭が生えっぱなしの、白っぽい布をマフラーのように巻いた、全身真っ黒な寝袋の不審者…少なくとも、僕はそう思った。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
「てことは…この人もプロのヒーロー…?」
でも…見たことないぞ、こんなくたびれた人…とつい失礼なことを考えてしまった。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
「担任‼︎?」
ついていけてない生徒をよそに、寝袋をゴソゴソと漁るとなにかを取り出した。
エマちゃんは何かを察したのか、それを見て「なるほど…」と呟いた。
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
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