第8章 天主砲撃
「光秀さん」
「御館様のお前を思う気持ちは溢れんばかりだからな。受け止める方も大変だろう……?」
「………」
この手の質問にはどう答えるのが正解かが分からない。
「あの……、この度は私のせいで皆さんに迷惑をおかけしてすみませんでした」
光秀さんの言葉に引っ掛かりを覚えながらも、私は頭を下げてお礼を伝えた。
「御館様が望まれた事だ。礼なら御館様に言うがいい」
「はい。それでもありがとうございました」
「ときにお前は、あの商館に前にも行ったことがあるのか?」
「え?」
話は終わるのかと油断をしていたら、思いがけない質問が飛んできた。
「あの後、もぬけの殻となった商館をくまなく捜索していたら面白いことが分かってな」
「面白いこと?」
「どうやらあの商館には帰蝶と深い関係のある女が住んでいたらしいが、お前はその女を知っているか?」
光秀さんは、おそらく安土にいる武将の中で一番私を疑っている人だ。
「さぁ、女中ならば何人かは会いましたが……」
だから彼の言葉にはいつも含みがあるけど、今日この瞬間が一番恐ろしい。
「あれは女中の部屋ではない。あれは特別な者に与えられた部屋だ。調度品は全て異国のもので揃えられ贅沢な品が並んでいた」
「そうなんですね」
光秀さんは私の正体に気づいてる?
私に、自白しろと言う事だろうか……?
こうなる日がいつかは来るかもしれないとは思って安土では過ごしてきた。それが今日で今であってもおかしくはないわけで…
様々な思惑に疲れた私は、言ってしまえば楽になれる気がして…
「光秀さん、私………」
「そんなこの世の終わりみたいな顔をするな」
光秀さんは私の言葉を遮って、私の頭をぽんっと撫でた。