第8章 天主砲撃
「………っ!」
「深く詮索するつもりはない。御館様はどんなお前でも受け止めるだろうからな。だがもしお前が信長様の天下布武への障害になると分かった時は容赦はしない」
「……もし、もしも私が信長様の道行を邪魔したら?」
「その時は俺がお前を御館様にバレぬ様始末する」
優しい目は途端に鋭い光を放って私を見据えた。
「光秀さん、もしもそんな日が来た時は、お願いがあります。
「なんだ?」
「その時は、確実に私を殺してください」
私はなぜかいつも生き残ってしまうから。もう生き残らないように確実に……
「何を言うかと思えば、可愛い顔をして中々物騒な言葉を吐く」
光秀さんは目の光を引っ込めて穏やかな笑みを浮かべた。
「まぁ、俺の胸の内にしまっておくとする」
もう一度私の頭をぽんっとして、光秀さんは行ってしまった。
「紗彩、待たせたな」
入れ違いで戻って来た信長様は、私を馬へと乗せて信長様自身も馬へと跨った。
「これより安土へ戻る!」
【おーーっ!】
男らしい声が堺の空高く響き渡る。
「怖くはないか?」
「え?」
「馬上は、高い所は苦手であろう?」
「あ……っ!」
そう言えば、今日は馬の上にいても震えは来ない。それどころか指摘される今の今まで安心し切っていたから気にならなかった
「ふっ、忘れておったのなら案ずることはなさそうだな」
そんな私の反応を見て信長様は優しく目を細める。
「絶対に落としたりはせぬ。大切に安土へと連れ帰ってやる」
包み込まれる腕の中は、どこよりも安全で温かな場所。
「はい。ありがとうございます」
安土に帰るのだと当たり前に言ってくれた言葉に胸を熱くしながら、私は帰路へとついた。