第13章 目覚めさせる方法
「そう言えば、これを預かっておる事を忘れておったな」
紗彩が俺に初めて書いた文……
恋文では決してないその文を袂から取り出し、ただ見つめた。
「………」
(紗彩の身に何かがあれば読んで欲しいと渡されたこの文…、絶対に読むことはないと思っていたが、紗彩を目覚めさせる手立てがあるのやもしれん)
「悪いが読むぞ」
眠る紗彩に一言そう伝え、奴からの文を開いた。
〔信長様
この手紙を信長様が読まれていると言う事は、私はもうこの世にはいないのでしょう………〕
奴らしい綺麗に整った文字で書かれた文は、そんな言葉で始まっていた。
「ふっ、やはり恋文ではなさそうだな」
書いた本人の寝顔に一瞬視線を落とした後、俺は再度文へと視線を戻し、愛しい女からの文を読み始めた。