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おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第8章 天主砲撃



「………っ」

開いた襖の先には、帰蝶の姿。
走って来たのだろうか?わずかに肩を上下させ息切れしているように見える。

「帰蝶…、その方、なんの断りもなく部屋に入るとは何事ぞ!」

余興を中断された将軍は帰蝶を睨み見た。
そのあまりの目の冷淡さに元就の言葉を思い出す。

(ダメだ、帰蝶が殺されてしまう!)

言わなければ…、私は大丈夫だって…、ちゃんと将軍の相手が出来るって…、

でも体が震えて…怖くて言葉がうまく出てこない。
何より、この男にこれ以上触れられたくないっ!


「……っ帰蝶私……」

「何も言うな」

帰蝶は緊張した面持ちで私にそう言って彼の後ろにかくまうと、将軍に向かって深く頭を下げた。


「この女の背中には醜い傷跡が無数にございます。このままでは義昭様のお目汚しになるかと思い、止めに入った所存…」


ズキンッ!

帰蝶が私を助けるために言ってくれた言葉だって事は分かっていても、言葉のナイフに胸を抉られたように深く突き刺さった。

分かってはいたけど、やっぱりこの傷を醜いって思ってたんだ…?


「その女、羽虫の分際で私に逆らいおった。今すぐに潰せ」

「はっ!お目汚しにならぬよう、外で処分致します」

帰蝶は立ち上がり私の腕を掴んだ。


「来い」

「………」


醜い傷、羽虫、潰す。
それらの言葉は全て私に向けられたもの…

そして帰蝶は、こんな危険な世界で生きているって事だ。


部屋から出てしばらく無言で歩くと帰蝶は足を止めた。


「なぜ元就の言う事など聞いた?俺の命が本当に危ないとでも思ったのか?」

険しい顔…
帰蝶のことを知れば知るほど彼の私を見る顔は険しくなって行く気がする。

「……っ、そうだよ!帰蝶が斬り殺されちゃうかもって思ったからだよ!それに、これが私の役割だって思ったから……。だって私は、帰蝶の間者なんでしょ?」

「何?」

「元就さんが言ってた。帰蝶が私のことを間者と言ってるって……」




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