第8章 天主砲撃
「え?」
「俺たちは信長に対抗するため将軍を担ぎ上げたが…この男が厄介でな、気にいらねぇ事があるとすぐに人をゴミのように切り捨てる。ここに来てからは特に機嫌が悪い。そんじょそこらの女じゃあ話にならない。これ以上機嫌を損ねると帰蝶が斬られちまうかもしれないぜ?」
「機嫌が悪いってだけで人を斬るんですか?」
「あ?んなの、信長と変わんねぇだろ?気に入らねえ事があれば斬り捨てる。一緒だろ?」
「信長様はそんな方ではありません!」
針子頭や彼女のお父上の件はあったけれど、理由なしに信長様が人を斬るのは見た事はない。
「そうかお前……、くくっなるほどなぁ、帰蝶もとんだ誤算を生んだもんだ」
元就は何かに納得したように愉しそうに口角を上げた。
本当に気分が悪い。
「間者として送り込んだ女が信長に懐柔されるとは、帰蝶もとんだ間抜けだな」
「何言って……」
「要はお前は帰蝶を裏切ったってことだろ?」
「どうしてそうなるんですかっ!」
「信長を庇うって事はそう言う事だ。部屋まで与えられて、間者としては破格の扱いを受けておきながらお前は帰蝶を裏切ってるってわけだ。面白しれぇじゃねぇか」
「………っ」
この男が発する言葉の全てがナイフのように突き刺さる。
見ず知らずの私に居場所を作ってくれた帰蝶に私が勝手に恋をして、勝手にこの時代にまで着いて来て、私のことを好きになってくれないからって今の自分の状況を嘆いて帰蝶にひどい態度をとって……
私は、恩を仇で返すような事をしてる…!?
「帰蝶を助けたいだろ?」
悪魔のような囁きに私は無言で頷いた。
そこからの記憶はあまりない。
部屋に入って来た女中たちに連れられ身を清め、将軍の前へと連れて来られた。