第8章 天主砲撃
「よぉ、お姫(ひい)さん、やっと会えたな」
その声に振り返れば、健康的に良く焼けた肌にピアスをした銀髪の男が立って薄笑いを浮かべていた。
勝手に部屋を出たことを帰蝶に見つかった訳ではなかったことに安堵しつつも、この含み笑いは歓迎できない。
「あなたは?」
「俺は毛利元就だ。お前は紗彩だろ?」
「……はい」
(歴史の授業で聞いた事のある名前…)
信長様の所にいてすごい武将達に会いすぎたからかそんなに驚かないけど、でも教科書に出てくるほどの人だから、きっとすごい人なんだろう…
「はーん、なるほどな。…これは帰蝶が隠したくなるわけだ」
毛利元就と名乗る男は私に近付くと、顎に手を置き私の顔をまじまじと見る。
「………」
嫌な視線にいい気はしないけれど、帰蝶が私を隠すという言葉の方に引っ掛かりを覚えた。
「別に帰蝶は私を隠していた訳ではありません。私の体調がずっと良くなかっただけで…」
だって帰蝶に私を隠す理由なんて無いはずだもの。
「まぁそんな事はどっちでもいい。部屋から出て来たって事は、今は体調は良くなったんだろ?」
「はい。もう起きても大丈夫ですけど…、失礼ですがあなたは帰蝶とはどういう関係ですか?」
今まで帰蝶の交友関係や仕事内容を知ろうとはしなかったけど、歴史に名を残す程の人が帰蝶とどんな関係で、なぜ私の事も知っているのかが気になった。
「今は、帰蝶と協定を結んでる関係とでも言っておこうか。内容は多少違うがこの国が乱れに乱れる事を共に目指してるってとこだ」
「そうですか……」
帰蝶と目的が同じ。
それは、信長様の敵という事だ。
「それより、体調が戻ったのなら頼みてえことがあんだが…」
「え?」
警告を伝えるように、彼の耳のピアスがキラッと綺麗に光った。