第8章 天主砲撃
「光秀、どうであった」
「はっ!此度の砲撃の首謀者は間違いなく帰蝶ですが、それに共謀する者の正体が掴めました」
「誰だ?」
「死んだと思われていた毛利元就です。海賊衆に紛れ身を潜めていたようです」
「謀神か…生きておったか」
「そのようです。しかもあの二人、どうやら足利義昭を奉じて各地の大名たちを唆しているようです」
「足利義昭とは、また懐かしい男の名が出てきたものだな」
「懲りずにまだ天下静謐などと言っているのでしょう」
「腐っても将軍家…まだまだ群がる輩はいると言うことか」
「如何致しましょう?」
「打って出る。それだけだ。急ぎ兵を集めよ!」
「はっ!」
毛利元就に名ばかりの将軍と帰蝶。
そんな奴らの中に紗彩が捕らわれているのか……!
何かされてはいないかと考えるだけで気が狂いそうだな。
「なぜ奴ばかりが危険な目にあう?」
何を求めるでもなく、静かに生きていたいと願うような奴なのに……
「因果応報というやつか?」
数多の命を奪ってきた俺への、これが天罰なのか?
「……ふっ、これが天罰だというのならば受けて立つまでだ」
奴は必ず救い出す!そしてこの乱世を終わらせ、奴が傷つく事のない世を作り上げる。
何があろうと、奴が何者であろうとも、紗彩を手放すと言う選択肢は絶対にない!
・・・・・・・・・・
「ご馳走様でした」
戦国時代を感じさせない商館の中で、朝食として出されたパンケーキを半分以上残して私はフォークとナイフを置いた。
「…それでは元気にならん。これを残したことはないだろう?」
帰蝶はお皿を私の方に押して食べろと促す。
「ごめんなさい。あまり食欲がないの」
バターとたっぷりのハチミツがかかったふわふわのパンケーキは私の好きな食べ物で、元気がない時には決まってこれを帰蝶は食べさせてくれた。
「未来にいた頃は生クリームも乗ってたよね」
「そうだったな。お前はいつも真っ白になるほどのホイップを乗せていた」
帰蝶はそれを見て「よくそんな甘いものばかり食べられるな」って顔を顰めてたっけ。
信長様なら何て言うかな?
《貴様はこの”ぱんけーき”が好きなのか?”ほいっぷ?”何だそれは!》
って、興味いっぱいの顔で聞いてきそう。