第8章 天主砲撃
どおぉぉーーーーーん!!!
おいしいお団子屋さんができたので行ってみませんか?と花が誘ってくれ、その団子屋を目指して歩いていた時、耳が引き裂かれるほどの轟音に歩みを止めた。
「………何っ?」
音の次は、僅かに地面からの揺れも感じた。
「地震……?」
時代は違えど地震大国であることには変わりはないはず。
辺りを見回すと、町の人々も動きを止めてキョロキョロと状況を確認している。
「きゃあっ!」
花が突然叫び声を上げた。
「花?どうしたの?」
「紗彩様………あれを………!」
手をぶるぶると震わせて花が遠くを指刺した。
「なに?どうしたの…………っ!?」
彼女が指を刺した先には、信じられない光景があった。
(っ、天主が…燃えている………!?)
「てっ、敵襲だっ!安土城が砲撃されたっ!」
「きゃあっ!!」
誰かがそう叫ぶと、人々は悲鳴を上げて一斉に逃げ出した。
「紗彩様、私たちも急ぎお城へ戻りましょう」
「そうね。急ぎましょう」
ドキンッドキンッドキンッ………
心臓が嫌な音で早鐘を打つ。
『暫くはあの天主に近づくな』
『………どうして?』
『じきに分かる』
帰蝶が言ったあの言葉が思い出される。
(あれは、この事だった?帰蝶が何かしたのっ!?)
走り出した花に続いて走りながら天主を見れば、炎を上げて燃えている。
(どうしてあの言葉にもっと注意を払わなかったんだろう……!)
帰蝶が意味もなく言葉を発するわけがないのに、あんなにもはっきりと”天主”
だと言っていたのに!
(信長様…天主にいなかったよね?)
今朝は朝食を一緒に食べた。
『今日は何をする予定だ?』
『今日は、花と一緒にお団子屋さんへ行く予定です』
『そうか、支払いは俺につけておけ、二人で腹一杯食べてくるがいい』
『っありがとうございます』
そう言って笑ってくれた信長様に、なぜ今日の予定を聞き返さなかったんだろう…!
違う、今日だけじゃない。
私は、信長様が日々どのように過ごされているのかを知らない。