第8章 天主砲撃
昨夜も今朝も、少し前から信長様は確かに優しいと感じる事が増えた。
それに昨日の帰蝶の言葉と、今の花さんの言葉と、昨夜の信長様の言葉…、
『貴様は俺の女で、俺が抱く唯一の女だ。いい加減覚えよ』
私が唯一の女だと言って、優しく抱かれた。
いくら鈍感だったとしても、これだけの言葉や態度が続けば分かる。
きっと信長様は……
(こら私、調子に乗るな!)
導き出される考えに心の声が反論する。
そうだ。調子に乗ってはいけない。
ちょっと優しくされるとすぐに絆されてしまうのは私の悪い所だ。
帰蝶がダメなら次は信長様?
そんな勝手な話…許されるはずがない。
それに、私が信長様の人生を変えてしまい、騙してここにいることは今でも変わらない。
私には、信長様に思われることも、それを受け入れる資格もない。だから、この気持ちには気付いてはいけない。
「花さん、私の友達になってもらえませんか?」
「友達…ですか?」
「はい。お願いします」
気付くことはできないけれど、罪を償うことは少しは出来る。
信長様が私に飽きるまではここにいさせてもらって大罪を犯した罪を償おう。その後でこの城を出ても、もう誰も傷つくことはない。
なんの力も持たない私にできることは、それくらいしかないのだから……
・・・・・
心がそう決まれば、城での生活は幾分か穏やかなものとなった。
花の存在はとても心強いものとなり、見方を変えれば人の優しさに気づく事もできた。
部屋の外にいた監視の方もいつの間にかいなくなり、こうやって信長様のお気持ちが変わられる日までを過ごして行くんだろうと思いはじめていた頃、
どおぉぉーーーーーん!!!
天主が、砲撃を受けた。