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おとぎ話の続きを聞かせて【イケメン戦国】

第7章 変わって行くもの



「紗彩様がお見えになりました」


開け放たれた襖の前で女中さんは正座し頭を下げると、速やかに去って行った。


残された私は、すでに皆が集まって賑わっている広間の前に一人残された。


《おおっ!》 

人々のどよめく声…

(やっぱり…場違いだよね..)

ここから先、どうすれば良いのかが分からず、頭を下げて部屋へと入り下座へと移動した。


「紗彩何をしておる、隣へ来い」


広間の一番奥の上座に座る信長様の声が、ここまではっきりと届く。

久しぶりに聞く声にドクンと鼓動が跳ね、遠くからでも射抜くような視線に絡め取られた。


(……っ、帰蝶があんな事言うから……)


意識した事のない感情が込み上がって来て、頬がジワリと熱を帯びる。


その視線に捕らえられたまま上座へと向かう。
信長様以外の視線も絡みつくように私を上から下まで見回しているのが分かりますます落ち着かない。


信長様の前まで行くと手を差し出され、躊躇いがちにその手の上に自分の手を重ねると横に座れと促された。


座った目の前には、豪華な膳と、信長様の周りには遊女が何人か座っている。
チラッと広間を見れば、やはり沢山の遊女が武将達の周りに付いていた。


「久しぶりに会ったと言うに、相変わらずの仏頂面だな」

そう言って信長様は私の横髪を一房手に取った。


「……すみません。このような場に慣れていないので…」

信長様の視線を痛いくらいに感じて、顔を伏せたまま答えた。

「慣れよ。今後は可能な限り貴様も同席させる」

「えっ!」

その言葉に驚いて信長様を見ると、

「やっと俺を見たな」

ふっと口元を綻ばせ笑う信長様と目が合った。

「………っ」

胸がキュッとなる。

「仏頂面でも、着飾れば綺麗に見えるものだな」   

手に取った私の髪をパラパラと落としながら離し、

「仕上げにこれをやる」

信長様は懐から何かを取り出して私の髪に付けた。






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