第5章 過去の記憶
『貴様は、二言目には代わりがきくと言うが、貴様の代わりなどどこを探してもおらぬっ!』
(あの言葉…どう言う意味だったんだろう…?)
あの時の勢いがあれば聞けたけど、今となってはもう聞くことはできない。
「…………」
私の言葉に対して、信長様は何も言わない。
ただ黙って私の横で胡座をかいて座っている。
そしてそのまま静寂が流れ……
信長様の言う通り熱が上がって来たのだろう。寒気が徐々に強くなって来た。
「…………っ」
歯がカチカチとなる程に震えが襲って来る。
「やはり上がって来たな」
そんな私を見て信長様は立ち上がると、自身の着物を脱ぎ捨てた。
「の、信長様………!?」
(ああ、こんな時でも抱くつもりなのか……)
激しく揺さぶられて背中の痛みに耐えられるのだろうかと思っている間にも、信長様は布団の中へと入って来て私を信長様の胸の上へと乗せた。
「……っ、すみません。今はお相手をできる気がしませんので、どうか他の方の所へ……」
痛みに耐える事は到底無理と思い、ガチガチと歯が鳴りながらもなんとかその言葉だけを伝えた。
「阿呆、怪我した貴様を抱こうなどとそこまで盛ってはおらん。熱の寒さには人肌が効くと聞いたことがあるゆえ温めてやる」
呆れたような声が聞こえると、逞しい腕に優しく包まれた。
(………あ、本当だ……温かい)
布団では得られない人肌の温度が心地よく広がって行く。
裸で抱き合うとはセックスをする以外にないと思っていたけど、こんな肌の合わせ方もあるんだ……
それを信長様に教えてもらうなんて、今日は本当に信長様に驚かされてばかりだ……
「針子頭のお父上様は、どうなりましたか……?」
きっと殺されてしまったと思いながらも聞かずにはいられず、質問を口にした。