第5章 過去の記憶
私の人生は高校生の時に一変した。
夏休み、家族旅行に行くために乗った飛行機が墜落した。
エンジントラブルが発生したと機内アナウンスが告げ、一人っ子の私と父と母、三列シートに座っていた私たちは互いに大丈夫だと励まし合いながら、身を低くして恐怖の瞬間が回避される事を祈っていた。
けれどもその祈りも虚しく飛行機は墜落。父と母は帰らぬ人となり、私はその飛行機の唯一の生存者となり奇跡の人とその時のマスコミは取り上げた。
飛行機事故の記憶は今でもはっきりと覚えている。
焼ける金属の匂い、血の匂いと人々のうめき声…
そして私の背中に残った飛行機事故の時の火傷の痕…
両親を失った私を引き取ってくれたのは母の妹夫婦。そこでの生活はひどく辛いもので…
叔母は、綺麗で優秀で近所でも評判だったと言う私の母を幼い頃からずっと恨んでいたと言い、その母に私はそっくりだと言って何かと辛くあたって来た。それでもまだ言葉を浴びせられている内は良かった。
きっかけは、叔母の娘で私と同い年のいとこが彼女の彼を私が誘惑したと、ありもしない事を言い出した事。その日を境に、叔母といとこからの見えない箇所への暴行が始まった。それでも一人で生きていく事などできない私は成人するまではと耐え続けた。
けれどもある日、叔父が私の部屋へと入って来て「慰めてやる」と私の口にタオルを押し込んで襲って来た。必死で抵抗している所へ叔母が戻って来てその現場を見られてしまう。
叔父は私が誘って来たのだと言い、叔母は激怒して私を力の限り何度も殴った。
そしてその日のうちに小さなボストンバッグに着替えと、両親の遺産だといって二万円を渡され家を追い出された。
僅か二万…
それで人生を一から始めることが無理だって事くらい誰でも分かる。
「どうしよう…」
行くあてもなく途方に暮れていた時に帰蝶に出会った。
欲しかった物全てを与えてくれた帰蝶は私の全てとなった。
だから、彼が望む事ならなんでもやろうって…それが彼への恩返しになるって…、ずっと彼が私を必要としてくれるはずだって…、そして出会った時のようにまた愛してくれるって……
そう思っていたのに………