第4章 嫉妬と仇討ち
・・・・
・・・・・・・・・・・
数日後、頭の包帯が取れた私は針子部屋での仕事を再開させることにした。
「おはようございます」
久しぶりだからか、それともまだ来る気なのかと思っているのか、針子たちは重い面持ちで私を見る。
顔を合わせるのは気まずいけど針子頭の元へ挨拶に行こうと思い、彼女の作業場所を見るけれど彼女の姿がない。
(珍しいな…、いつも早くから作業をしているのに…)
私への当たりはキツかったけど、仕事に対しては丁寧で真面目な彼女がまだ来ていない……?
「あの、すみません」
不思議に思いその隣に座って作業をしている針子に声をかけた。
「はっ、はいっ!」
(……?)
声をかけただけなのになぜか過剰な反応……
「針子頭は、今日はお休みですか?」
「え……?」
私のその言葉で、部屋中がざわっとなった。
(……?)
「あの……」
不思議に思いもう一度聞こうとすると、
「紗彩様申し訳ありませんでしたっ!」
その針子は急に畳にひれ伏した。
「ど、どうしたんですか?」
しゃがみ込んで彼女の顔を覗き込むと、”ひっ”っと、彼女は小さな悲鳴を上げた。
「い、命だけはお助けをっ!」
「え?」
彼女は、さっきから何を言っているんだろう…?
まるで私に怯えている様な……
「私たちもすみませんでしたっ!」
「申し訳ありません」
「命だけはどうか…」
一体何が起こっているの…?
他の針子たちも一斉に謝罪を口にしてひれ伏した。
「どう言う…事ですか……?」
姿の見えない針子頭、
ひれ伏す針子たち、
命だけは、という言葉………
背筋がゾクリとして、嫌な予感が頭をよぎった…
「……っ教えて下さい。針子頭の方は…どうされたんですか……?」
怯えてひれ伏す針子の顔をもう一度覗き込んだ。
「紗彩様…本当にご存じないのですか?針子頭は、紗彩様を池に突き落とし傷つけた罪で、その場で信長様がお手討ちになさいました」