第4章 嫉妬と仇討ち
「俺の力をみくびっておるのか?」
「え?」
「貴様一人も守れぬ男だと、そう言いたいのかと聞いておる」
「あの…」
鋭く強い視線の中に、信長様の中にあると考えたことの無い感情が見てとれた。
(もしかして本当に…)
「私の事を…気にかけて下さったんですか?」
「は?」
信長様は、今度は少しだけ目を見開き驚いた顔で私を見た。
(お前何言ってんだって顔………、調子に乗るなってことだ。そうだよね、看病をしてくれたと言う言葉も俄かに信じ難いし…)
私たちの間にあるのはただの体の関係、性欲が満たされるのなら信長様にとってそれは私じゃなく誰でもいいのだから…
「……私は信長様の伽のお相手をするだけの者。私がどうなろうと代わりはいくらでもおります。なので私のことは今後も気になさらないで下さい」
どうせ信長様のお相手をしている間はこの嫌がらせは続くんだ。言ったところで何も変わらない。それどころか、あの様子じゃもっと酷くなるかもしれない…
「………」
信長様は眉間にシワを寄せて顔を顰め、
「そうだ。貴様はただそこに横たわって俺を満足させておればいい」
私の肩を掴んで褥に沈めた。
勢いよく倒れた頭はドサっと枕にぶつかり、痛みが走った。
「いっ、……っ!」
「………っ、」
私の着物を掴もうとした信長様の手が止まった。
(まただ…辛そうな目……)
「伽をするだけと言うが、貴様を抱こうにもこの様に怪我をされては抱く事が出来ん。俺の施しがいらぬと言うのなら二度と怪我をするな!分かったな!」
拳でガンっと壁を叩き、信長様は部屋を出て行った。
(……何か、気に触る様な事を言ってしまったんだろうか……?)
珍しく…と言うか、初めて信長様の動揺したところを見た気がする……
沢山ある玩具のうちの一つ。
信長様にとって私はそう言う存在…
壊れたら新しい玩具を手にすればいい。
なのに、この時の信長様は威圧的な態度と言葉を投げつける割に、目はなぜか寂しそうに見えて、よく分からないけれど胸の奥が僅かに痛んだ。